8.入札不調とは? 相次ぐ電力の入札不調からの考察
入札不調とは、入札不調とは、競争に付しても入札者がいない場合、又は予定価格の超過により落札者がいない場合をいう。
国土交通省・財務省・総務省が行った入札契約適正化法に基づく実施状況調査(2019年11月1日時点、一部19年3月31日時点)によると、全ての公共工事の発注者における不調・不落の発生率の平均値は7.9%となり、前年度調査より1.3ポイント上昇した。市区町村が7.2%と最も発生率が低い結果となっている。
発生率は、国・特殊法人・地方自治体(都道府県、政令市、市区町村)の全ての競争入札の契約件数と不調・不落の合計件数から算出した。一般競争入札・指名競争入札の契約件数の合計は30万5627件で、不調・不落の合計件数は2万4047件となり、発生率は7.9%だった。発注機関別では、国12.3%、特殊法人16.0%、都道府県7.5%、政令市8.8%、市区町村7.2%だった。(出展:建通新聞 2020年8月24日電子版より抜粋)
最近では、国の庁舎やトンネルなど公共施設の電力の入札案件に電力会社が参加せず、入札不調となるケースが相次いでいる。2022年4月から6月までの落札において“電力供給、電力調達”における入札に対して60件以上の不調案件となっている。
エネルギー市場価格の高騰による問題
2016年4月に電気事業法が改正。電力の小売が全面自由化され、さまざまな企業が電力の小売販売に参入できるようになった。
すべての消費者は、新電力会社(登録小売電気事業者)を含む電力会社や料金メニューを自由に選択することが可能になり、電気料金が安くなるというメリットが生まれた。
しかし、昨今のウクライナ情勢による原油・液化天然ガスの相場高騰によるエネルギー需要のひっ迫、市場価格の高騰で電力の調達コストが膨らむという問題が出てきた。
そのことにより、新電力を含む各電力会社の収益が大きく圧迫されている。
増加する新電力会社の倒産
帝国データバンクの「新電力会社」倒産動向調査によると、新電力会社の2021年度の倒産は過去最多の14件で、2021年4月時点で営業が確認できている新電力706社のうち、約4%にあたる31社が1年の間に倒産や廃業、事業撤退などを余儀なくされた。(出展:帝国データバンク)
倒産した新電力会社の多くは自前の発電所を持たず、調達の多くを卸市場に依存していたことも理由のひとつとして挙げられている。
法律で設けられている「最終保障供給」
入札で不調となった場合や、電力の一時停止をすると連絡を受けた場合には、再入札を行ったり例外的に個別に交渉したりするなどして契約先を探すことになる。
「契約できないと電力が停止されてしまうの?」と心配になるかと思うが、法律で定められた最終保障供給という制度があるため、急に電力が供給されなくなるということはない。この制度は、どの電力会社とも契約を結ぶことができなかった場合に、希望すれば管内の大手電力会社と契約を結べるというものである。しかしこの契約は、通常の電気料金のメニューよりも2割ほど高く設定されている。
入札不調案件の増加に伴い、各関係省庁、自治体において様々な取り組みが行われているが、現状にて入札不調低減には至っていない。現状の物価上昇、特にエネルギー、穀物類等、及び労働賃金の上昇については慢性的な人手不足にて顕著であり有効な施策は探求されていない。発注者側も法律に従い柔軟でオープンな制度改革を行っており、今後の対応を見守る必要を感じる。