代表理事月報(2024年12月)
「温故知新」
私は40年近く情報システム分野に携わってきた。主に外資系日本法人での仕事だったが、新しいテクノロジーやITソリューションを知りたいという好奇心が、この分野に足を踏み入れるきっかけとなった。
昔話で恐縮だが、メインフレームから始まり、ミニコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ネットワーク、アナリティクス、ビジネスインテリジェンス、ERPなど、これらの技術が黎明期から発展し成長していく過程を間近で経験してきた。
現在はその現場から離れているが、当時の熱気は今でも鮮明に覚えている。司馬遼太郎の『坂の上の雲』で描かれる「彼らは、明治という時代人の体質で、前をのみ見つめながら歩く。」という言葉が、自分の歩んできた道と重なるように思える。
2023年5月の代表理事月報では「AIは人間にどこまで迫れるか?私たちの仕事さえも奪う存在になりうるのか?」と問いかけた。それから約1年半が経過した今、改めてその進化を見守っているが、その変化の速さと領域の広がりには驚きを隠せない。この驚きはネガティブなものではなく、むしろかつてのような熱意を再び感じている。
「変革」や「革新」という言葉を使いたくないが、まさにゲームチェンジが起きていると実感している。
私が経験してきた情報システムは、人間の単純で繰り返しの作業をコンピュータで代替し、業務効率化や生産性向上を支援するものであった。KPIはROIや効率化、省力化といった「お財布に優しい」指標が中心だったことを記憶している。
これまでAIについても同じ文脈で捉えてきたが、最近のAIエージェントやAIツールの進化を目の当たりにし、情報システムの捉え方や哲学が大きく変わったと感じる。
情報システムは、人間の作業を単純に代替するものではなく、いわば「伴走者」としての役割を担いつつある。個人や組織の成長や方向性の決定に寄り添い、共に歩み、共に考える存在へと変わりつつあるのだ。
入札の根本には、市民・住民の安全と安心をライフラインとして提供し、ウェルビーイングを実現するという目的がある。この目的において、AIは極めて重要な役割を果たすと確信している。
年末を迎えるにあたり、新年に向けた新たな宿題がまたひとつ増えた。
良い歳を。
今月はここまで。
2024年12月
代表理事 青柳恭弘